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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「トゥモロー・ワールド」

洋画 SF アクション

 絶望の近未来って奴は最高ですぜダンナ。

 

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【あらすじ】

 全世界で不妊率が高まり、ついに18年間子供がひとりも生まれていないという異常事態になっている近未来。英国含め各地では暴動が相次ぎ、人類全体が絶望に包まれていた。英国官僚セオは反政府グループの元妻に拉致され、不法滞在者のための通行証が必要だと言われる。実は身ごもった女性を「ヒューマン・プロジェクト」なる組織に運ぶために通行証が必要だと知り、セオは人類の未来をかけて彼女を守ることになる。

【感想】

 「みんな大好きわくわくディストピア」を期待してみるとハズレかもしれません。近未来の絶望感があるかと言えば、その辺の質感はイマイチありません。ざらついた空気もキレッキレのヒャッハーなモヒカンもそんなに登場しません。出てくることは出てくるのですが、そいつらは主役じゃないのです。残念。
 
 ストーリーは正直、前半は退屈でした。この世界に至るまでの説明はほとんどないし、なんかテロ組織がテロテロして暴徒がワ—キャーやってて主人公がオロオロしている感じです。なんとなく異世界に召喚された現代の男子高校生のような佇まいで、「こいつ大丈夫かなぁ」という印象です。

 でも、とにかくこの映画は「長回しによる臨場感」に尽きるのです。車で暴徒がおっかけてくるシーンは実際にはカットを分けて撮影しているそうですが、一見そうは見えません。数分間激しいアクションをダーッと一緒に駆け抜けていく疾走感があります。このあたりから「お、面白い絵だな」と思い始め、あとは一直線にラストに向けて突っ走っていくのです。
 
 期待していた仲間の反政府グループとも仲たがいし、一行はセオの友人の家に匿ってもらうのですが、すぐに追手が来ます。「ここはわしに任せて裏から逃げろ」「でも一緒に」「何、すぐ追いつくさ」という華麗な死亡フラグを立ててしまったせいでセオの友人はあっけなく退場。実はこの映画のひとつの味として「簡単に人が死んでいく」ところもあります。テロの犠牲者といい、セオの元妻といい、仲間たちやこの友人といい、みんなポンポン死んでいきます。ヒューマン・プロジェクトに接触するために移民収容所にもぐりこみ、そこでも非人道的な軽い扱いを受けます。人の命は地球より軽い。

 そして感動の出産シーン。ここも長回し。出産シーンって、何見ててもなんだか応援したくなる。なんでだろうね。というか、破水してからあんなに過酷に歩けるのかな。すげえな人体。

 最後に、やっぱりこの映画の一番の見どころの驚異の長回し戦闘シーン。テロリストと軍隊の攻防戦に巻き込まれ、必死で逃げる主人公。これは文字じゃあ伝えるのが難しい。そして赤ん坊がいることがわかり、戦闘をやめるシーンは圧巻です。音楽とか言葉とか、そういうのではなくてただ赤ん坊の声だけでここまで神聖なものを感じさせる絵ってありますかね。このシーンだけでも「ここまで見てきてよかった」と感じました。

 生まれてくる子供とそれを守るために散っていく命というバランスが絶妙で、見た後しばらくぼーっとしてしまうような映画でした。正直ストーリーはそんなに「コレ」というところはありませんが、とにかく驚異の長回しカットは見ておいて損はないと思います。映画館で観たかったなぁ。