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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「リアル鬼ごっこ」

小説

 数百年後に「これは小説界のアバンギャルドだ! 歴史に名を刻む!」と言われてもおかしくはない。

 

リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ

 

 【あらすじ】

 時は西暦3000年。日本らしい国を治める暴君が退屈で始めたのが「リアル鬼ごっこ」。1億人いる人口のうち500万人を占める佐藤姓を駆逐するのが目的。主人公の佐藤翼は陸上競技インターハイで優勝する脚力の持ち主だが、悲惨な家庭状況で育ち生き別れた妹のことをいつも考えていた。はたして翼は逃げ切ることができるのだろうか。

 

【感想】

 この本の素晴しい所は、何とも実用的なことです。数回くらい真剣に読むと頭痛がします。めまいがします。頭を使えば使うほど、「頭痛」が痛くなってきます。最終的にきっと熱が出ます。

「ママー、今日頭痛いから休む」
「あら、熱があるじゃない。仕方ないわね」

 そう、この本を使うことで意図的に体調不良を訴えることが可能になります。実際に読んでいて熱は出ませんでしたが、頭痛とめまいと軽い吐き気くらいまでは行きました。「これ以上読むと脳が死ぬ」と判断し、一度本を置いた次第でございます。

 そして「怖い怖い」という評価なのですが

 全く怖くない。

 むしろところどころ「ドリフの大爆笑のテーマ」が頭の中で鳴り響いていかりや長介が踊り出す次第です。「そんな本だーよ♪しーかたーがない♪」と言われてしまえばそうなのでそれはそれで仕方がない。「その時までサヨナラ」方式で正の字を最初は書いていましたが、30ページ付近で既に50個のはてなマークが並んでいたので以後数えるのをやめました。やめて正解でした。

 もう日本語の不具合とか文章の構成とかあり得ない展開とか、そういうことはさんざん言われていると思うので割愛。みんながおかしいと思ったことは自分もおかしい。だけどさ……言葉の意味の間違いは重大だと思うんだよね。

・弔問客が途絶えたら当たり前のように終了する「通夜」。
(通夜って、夜通し行うから「通夜」なんだけど)
・翼の父「お前の妹は俺の弟夫婦に預けた」
 翼の妹「私はお父さんのおじさんに育てられた」
(これは誰かがウソを言っているのだろうか)
・王の弟である王子
(王子は王様の子ではないのだろうか)

 これはダメだよ出版社。どう見ても日本語のゆらぎとか斬新な表現とかそういうので説明できる範囲じゃない。マラソン競技でチャリを使うくらい反則である。「コラ!ズルをするな!」という常識に「別にこっちのほうが移動に合理的だからいーんじゃないですかー?」と反抗するロック精神があるかと言えば、多分思想もなにもないと思われるのでやっぱりダメです。

 頑張って読んでいる途中で気が付いたことは「あ、これもしかして校正してないとかじゃなくて、作者の頭の中をそのまま文字に起こしただけじゃね?」ということでした。だから間違ったままの日本語も不自然な表現も仕方がないのです。普通であれば「ひらめき→文字起こし→整える→校正」という手順を踏むべきところの「文字起こし」で終わっています。良く言えば「ダイレクトに作者の頭の中が覗ける」という新感覚超エキサイティングな読み応えがあるのです。まるで攻殻機動隊の世界が実現しているのです! これは画期的! きゃっほう!

 つまり通夜のシーンが適当なのは作者自身が通夜の経験がなかったからなのでしょう。自身にあてはめて想像できないことは書かない。これが作品中の全ての日本語の狂いを生んでいるのではないでしょうか。

 そして設定上のツッコミを上げると数が知れないのですが、どうしてもひとつだけ言いたいことがあるとすれば「500万人の佐藤さんを収容する施設と、それを殺して遺体を処理する施設って一体何なんだ!?」ということ。かの悪名高いアウシュビッツだって、累計死亡者数が大体400万人でガス室で殺された数も累計で50万~100万くらいらしい。そして遺体の処理も大変で不衛生であったという話も考えると、どう考えても数日かそこらでこれだけの人数を静かに処分できる施設は無理だ。西暦3000年だって? キノコスパゲティーをファミレスで頼んでいるような文明にそれは期待できない。それにそれだけの数の佐藤さんが暴動を起こせば一発でクーデターくらい成立すると思うのだけれど、それはどうなんだろう? あと「王様の兵士が佐藤だった場合は?」とか考え始めると頭が痛くなってくるのでやめる。まだ死にたくない。

 「死にたくない」という気持ちが書きたかったのだろう作者ですが、おそらく本当の「死」を向き合っていないのだな、という印象しかありません。死とは、死んでしまえばオシマイではないのです。これぞ「ゲーム脳」っていう奴なんですかね。小中学生はこの本を「オモシロイオモシロイ」と言って本当に読むのです。個人的には「明日ママ」なんかよりこっちを有害図書指定および発禁くらいしてもいいと思うのですが。ダメですかね?

 おまけ:同じ鬼ごっこだったら「青鬼」のほうが絶対怖い。「鬼が追いかける」というだけでアイツの顔が脳裏に浮かぶ。ダメだあれだけはダメだ。