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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「ローズ・イン・タイドランド」

洋画 ホラー カルト

なんとなく衝動で借りたら面白かった。

 

ローズ・イン・タイドランド [DVD]

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 【あらすじ】

 ジェライザ・ローズの母親は、ドラッグの摂取のし過ぎで死んでしまう。ジャンキーの父親と一緒に彼の母の家へ行くが廃屋同然で、そこで父はトリップしたまま帰ってこなかった。ジェライザは4人の友達(バービー人形の頭)と暮らし、近くに住む魔女とその弟のサメハンターに出会う。残酷な現実を空想の世界で過ごすジェライザの、無垢で真っ黒な幻想映画。

 

 【感想】

D

 間違いなくキャッチコピーの「ギリアムのアリスは孤独の迷宮をさまよいます」で「きゃーアリスだって!可愛い楽しみー♪」とかいうゆるふわ愛されガールを問答無用でぶっ飛ばすブラックさと残酷さ。それか少女のあまりにも奇天烈な妄想の世界を理解できずに終わるのか、とあるきわどいシーンで「非常にけしからん!」と憤慨するかのどれかだろう。

 基本的にぶっ飛んでいるとしか言いようがない。そもそも登場人物がジャンキーに育てられた娘と精神病んじゃったオバサンと精神が10歳程度で止まった兄ちゃんしか出てこないのだから、まともなストーリーを期待する方が負け。そしてこの映画は一にも二にもジェライザ役のジョデルちゃんがむちゃくちゃかわいい。そして演技もむちゃくちゃうまい。この子がいなかったら全て成立しない世界だと思うと、ある意味背徳の匂いも漂ってくる。これは全力でブラックな雰囲気に浸る映画だ。

 そもそも「友達がバービー人形の頭だけ」「腐った父ちゃんが目覚めるのを待っている」「精神年齢が幼いオカシな成人男性と無意識に恋愛」「剥製をつくり死を拒絶するオバサン(ただしやることはやっている)」とイベントを並べるだけで現実的にはツッコミどころだらけのストーリーである。特にバービー人形の友達は作中非常に大事なポジションで、一番仲良しのミスティークなど本当にもう一人の登場人物としてあげてもいいのではないかと思うくらいよく作られている。基本的にミスティークは比較的常識的に物事を見ようとするジェライザの心の声を担当しているのか、彼女の妄想に現実的なツッコミをいれる場面が多々ある。ただ、これも全てジェライザの独り言なので明らかに異常な世界なのです。

 そしてこれまた頭のおかしな隣人たちも事態をややこしくしている。オバサンは社会とのつながりがあるので比較的まともに描かれているけれども、よく考えなくてもおかしい言動は多い。輪をかけておかしい彼女の弟は精神年齢が幼いまま大人になっていて、ジェライザの無邪気な遊び相手になっている。彼もまた彼の妄想の世界を持っていて、ジェライザをそこに連れて行く。更に「ごっこだろう」とはいえ、どう見ても「これはアカン」という危ない恋愛シーンの連続。ジェライザが彼の部屋に入ったときは正直どうしようかと思った。ひとつひとつが少しでもずれたら完全に崩壊する綱渡りのようなシーンの連続で、あのシーンだけで変なホラーよりドキドキできた。

 荒唐無稽な話のようだけどちゃんと筋もオチもあって、最後は安心することができたので不条理原理主義者としてはつまらないところだけれども、連続するただただ不条理だけれども美しい心象風景は素晴らしい。絵だけ見ていてもいいくらい楽しい(?)映画でした。

 どうも日本人はストーリーばかりを重視して、演出や美術を軽視する傾向にあるのでそういう意味では評価は低いだろうけど、細切れな妄想の連続は何回見ても飽きないと思うのでとりあえずオススメしておきます。ただし、ブラック臭が強すぎて非常に人を選ぶ作品でありますのであしからず。