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傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「魔法少女まどか☆マギカ」

 あたしって、ほんとバカ。

 

 【あらすじ】

 中学生の鹿目まどかは不思議な夢を見る。学校へ行くと夢に出てきた少女が転校生としてやってくる。やがて「願い事をかなえる代わりに魔法少女にならないか」という不思議な生き物、キュウべぇが姿を現す。

 

 【感想】

 映画観る前に予習みたいな形でとりあえずTVシリーズを一通り見ました。ある程度ネタバレはあったのでがっちり物語に入ることはありませんでしたが、それにしても「攻めるなぁ」というのが正直な感想。劇団イヌカレーの空間は本当に挑戦的というか、大人向けアニメとしてスバラシイと思う。どうせある程度の議論はされつくしていると思うので、どうでもいいけどものすごく気になった部分についてだけ書くね。

 

○どうして「魔法少年」はいないの?

 「思春期の少女のエネルギーが素晴らしい」らしいけど、「思春期の少年のエネルギー」じゃどうしてダメなのか。キュウべぇの理屈だと、男性が魔法少女になれない理由が全く分からない。「単に女性のほうが効率がいいからだよ」とか言いそうだけど、思春期という理屈をつけるなら、男も女もそんなに変わらない気がする。単にキュウべぇが女の子とイチャイチャもふもふしたいからなのか。それとも視聴者が野郎がいる世界を観たくないだけなのか。ループだの魔女っ娘もののアンチテーゼだのあるけど、この辺、割と裏テーマなのかもしれない。


○なんでまどかの父が専業主夫なの?

 未来の話っぽいし、こういう家庭もアリなんだよーっていう薬味程度かと思っていたけど話が進むにつれてどうやらそうでもないらしいというのが見えてきた。わざとまどかの母はバリバリのキャリアウーマンにしている。そのために父親専業主夫になるしかなかったんだという感じ。

 

 まず、この「まどマギの世界」には「男」の役割をする大人の男性は登場しない。まどかの父の他にキャラクターとして登場するのは、「魔法少女とその友達」「大人の女性(お母さんと担任)」「魔女」「上条くん」くらいです。びっくりするくらい登場人物の多様性がない。真面目に出てくる大人の男の人がいない。病院の先生くらいか。上条くんは同級生だし、お世辞にも「男性」というキャラクターではない。そして「大人の女性」の口から語られる男性像がすごい。

 

 まどかママは上司(おそらく男性)の愚痴。担任は世の男性がいかに思いやりがないかという愚痴。さらに杏子の父親は話を聞く限り同情できる境遇にはないし、さやかの魔女化の一因となった男の話もひどい。中学生が聞いたらトラウマものである。

 

 つまり「大人の女性」は魔法少女たちに「男はろくなもんじゃない」と植えつけていて、当の男たちは主夫やってたり幼児だったり魔法で助けられた王子様だったりする。そんな「男性不在」の中でまどかを導くのが社会経験バリバリのまどかママ。従来のよくある話だと、ここで導くのは「父親」の役目。母親が父親の役割を同時に果たしている。そんで父親は従来の母親の役割をしている。ジェンダーフリーをここまで強調したい意図は何か?

 

 そもそも「物語の中の男性」を否定しているとしか思えない。意図的に消去しているのではく、男性らしいものは登場させて殺している。大人の女性から語られる壮大な男dis、男性の不在。そして話が少女だけで進められていく。実際に「思春期の少女の狭いもやもやを表した」というのもあるし、そういう演出が生きていたからこそファンタジーをファンタジーとして受け入れられたと思う。魔法少女はびっくりするほど自分たちの理屈だけで生きている。そこに大人が入り込む余地はないし、かつて少女だった大人の女性なら気持ちはわかってあげられる。

 

 ところが男っていうものは女があーだこーだ悩んでいると「わけがわからないよ」と突き放したり逃げたりする場合が多い。理屈だけ並べてアドバイスをして救ってやっているつもりになっていて、最終的に「オレが助けてやったんだぜ」と恩着せがましく何かしら言っている。

 

 そうか、男はみんなキュウべぇだったんだ。

 

○「魔女化」システムについて。

 「希望を願えばその分絶望を背負うことになる」っていうのは斬新なアイディアだなぁと。この辺が従来の魔女っ子もののアンチテーゼになっていると思う。もちろん従来は子供向けだから絶望がどうのこうのなんて前面には出せないけど、絶望を背負って戦っている敵だって、昔は希望があって戦っていた。それを一概に「悪」と断定してぶっ潰すのはどうかという話。

 

 ウルトラマンなんかには「悪い奴にも事情があって」なんて話もあるけど、こういう物語をすんなり受け入れられるのは日本だからなのかもしれない。特にアメリカは「勧善懲悪」「ハッピーエンド」以外は物語だと思っていない節もあるらしいし。海外だとこういう話は斬新だと思うので、クールジャパンを目指すなら全面的に推し進めてもらいたい。

 

○「ほむらのループ」設定からの結末。

 ループものは最初見ると「すげぇぇぇぇ!」ってなるけど見慣れてみると案外文法が理解できてしまって新鮮味がない。古いけど「VS騎士ラムネ&40炎」とか「カゲロウデイズ」の元になっている「昨日公園」とか。後は来年ハリウッドで映画化する「All You Need Is Kill」とか。

 

 

 「All You Need Is Kill」は宇宙人と戦っていて、死んじゃう主人公がその数日を何回も繰り返して生き残る方法を探る話。つまりゲームでボスを倒したけど、一発で倒したわけじゃなくて何回も失敗しているから倒せたみたいな話をSF風にまとめてあるという感じ。とっても面白いのでおススメ。ただ、今回のほむらのループの新鮮さは「友達を助けたい」というそれだけで自らループを選択しているということ。大体のループものは巻き込まれてしまった運命から逃げ出そうという流れになるんだけど、ほむらは進んでループを繰り返している。この辺が実は新劇場版につながるんだけど、それは次の機会に。

 

 まどマギに話を戻すと、結局の話の結末は「この世に神が生まれましたとさ」という結論。結局「絶望は救済するもの」として位置付けてしまったあたり救いを持たせているようで絶望を受け入れないあたりに少女の潔癖さを感じさせるラストでした。あと、なんとなーく「ジーンダイバー」っぽいなーと見ていました。女の子が世界の命運を背負って最後に選択するって構図、割と好き。しかもどちらかというと自分が犠牲になる方を進んで選ぶ。世界設定だけでいろいろ話ができる作品っていうのも、あんまりないんでいろんな人が「面白い」っていうのもわかる気がしました。

 

○あと個人的感想。

 マミとさやかのキャラが最後まで好きじゃなかったなぁ。単純にひねくれているキャラが好きなので杏子あたり大好き。まどかが好きじゃないのは言うまでもありません。ああ、単純に女の子キャラが好きじゃないのかもしれない。