傍線部Aより愛を込めて ~映画の傍線部解釈~

主にひとり映画反省会。人の嫌いなものが好きらしい。

感想「かまいたちの夜2~監獄島のわらべ唄~」(完全ネタバレ)

 最近勝手にホラーゲーム強化月間やってた。そんですんごい今更感があるけれども、今年のお盆に一番ハマったゲーム。もともと「かまいたちの夜」が好きでやってみたいやってみたいとずっと思い続けて、「中古で安くなってたらやろう」「時間が出来たらやろう」と延ばし延ばしにしていたら、なんと11年経ってしまいました。

 

かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄

かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄

 

 

 そんな思いのこもったこの作品でした。


【総評(ネタバレなし)】

 個人的にはものすっごく面白かったです。久しぶりに寝ないでぶっ続けで10時間くらいゲームやってました。ただ、このブログのタイトルの下に書いてある言葉通りなんだ。間違いなくこのゲームは人を選ぶゲームで、そして私は選ばれてしまった人間だった。


・前作の犯人当て失敗後のサバイバルゲーム的な怖さは期待しないほうがいい。
・前作の犯人当ての緊迫感が好きなら期待しないほうがいい。
・前作のスパイ編や悪霊編が苦手なら絶対やらないほうがいい。


 そんなゲームでした。

 やっぱり前作は神がかってんだなー、と思うところもありました。でも今作は今作で魅力がたっぷりでした。

・不条理モノが好きならごちそうです。
・生理的嫌悪(グロ、虫など)が好きならごちそうです。
・前作のキャラ崩壊が楽しめれば完全に勝ちです。


とにかく全体的にエグい、救われない、むごい、グロい、意味が分からない。


だがそれがいい


 ついでに、主人公やヒロインの名前や前作のメインキャストの名前は変わっていないのですが、「透」と「真理」では面白くないので少しひねって愛嬌のあるなじみやすい名前をつけました。

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氷晃石(さふぁいあ)


永命羅(えめら)



どうせピンクのしおりでイチャイチャするんだろうからって
思いっきりキラキラした名前にしてやったぜ!

実は後で後悔したり変な名前にしてよかったと思ったり。
(下記では便宜上「透」「真理」で話を進めます)




以下ネタバレしかない本編感想行きます↓



【わらべ唄編】
本編。人が死んで謎解きをするパート。
そんで今回初登場の「正岡慎太郎」の一番活躍すると思われるパート。

前作は何とか一切ヒントなしでトリックを見破ったのですが、今作は無理でした。
というか、今回のトリックは前作だと「透君、それはあり得ないよ」「ですよねー」デデーンという流れだと思う。
最初夏美さんが犯人だと思ったんだけど、そこだけは見事に真犯人に出し抜かれたというか、なんというか。
最初ひたすらAだけを選び続けてキツネの襟巻で死んじゃったから、余計そう思ったんだけどね。
浅はかでした。てか、前作も今作もみどりさんの扱いがひどい……。

最後の「完END」も今となっては、ちょっとキツいものあったかな……。
ずっと後の世界でもしかしたら発禁処分くらってもおかしくない。

そんでやっぱり最後のやり直しのきく犯人選びは新設設計すぎるなー。
もっと前作みたいなサバイバルゲームみたいなのやりたかったなー。


ただ、塔系のENDはどれも全部大好きです。

「カマドEND」は、声を出して笑ってしまった。シュールというか理不尽にも程がある。
この訳のわからなさがたまらなくいいのですが、間違いなく一般受けはしない。

「弟子END」はシュール系ギャグですかね。
ツボに入るまではいかなくても結構にやにやできました。

「パパEND」は全ENDの中でも屈指の不気味さだと思う。
途中の展開の明らかにおかしいのに透が変に冷静なところとか、最後のアレとか。
単純にゾっとできるENDは今回珍しいので。


【陰陽編】
攻略した順番で書いていきます。前作の悪霊編的な何かか?と思ったら

ひたすらグロい。

ひたすらエグい。

ひたすらバイオハザード


そんなパート。

香山夫妻の変容ぶりや神道関係の話は面白かったです。
ただマニアックすぎて退屈な人は退屈だろうなー、ってところはあったかも。

メインは多分俊夫さんのぶっちんショーだと思われるのですが、
プレイヤーの心には「我慢できない!」で踊り始めた透が印象に残ったことでしょう。

でも「見んといてぇ」は本当にせつなくなった。

そんで「完」は本当に完なのか!? という永遠の謎。
その不条理を受け入れないと、これから先が辛くなってくるのです。


【サイキック編】
次に進めたサイキック編。真理視点で話が進んでいく、前作で言うスパイ編。
銃がバンバン死体もザクザク、最終的にみんな死んじゃったというのはスパイ編と一緒。

ただ、キャラ崩壊が半端ない。
真理視点にしたことで、今まである程度統一した設定があった透がエラいことになった。
冷静に考えて「見た目は大人だけど中身は子供で人を殺すことを躊躇しないサイキック少年」って誰得だよ。
俺得だよ。

この時ばかりは「変な名前にしてきてよかった……」と思いました。
「ボクがどんな苦労をして育ったことか!!」みたいなシーンで
「ごめんね……氷晃石(さふぁいあ)なんて変な名前つけて苦労したね……」と変に感情移入しちゃいました。

というわけで途中からサイコメトリーしかできない真理より
化け物と母親にまで言われて苦労して育ってしまったサファイア君が気になって気になって仕方がなくて。

変な名前を付けておいたことで、「透」と認識しないで最後まで行けたのが幸いでした。
多分「透」のままだったら後々変な透観を引きずっただろうし。
このかわいそうなサイキック少年は「サファイア君」ということで封印した次第です。

ところで「死と腐敗を支配するもの」ってなんだったの?


【底蟲村編】
みーのむーしーぶらりんしゃんで始まってミミミで終わる
どこまでもどこまでも気持ち悪いとしか言えないパート。

後味悪い話、不条理な話はいただきますもぐもぐして20数年なのですが、
この完はちょっと精神的にガンガンきました。

一生懸命頑張ったのに、アレはないよ。
アレはひどいよ。
なんであそこで飛んで行っちゃうんだよ!!

蜘蛛が蜘蛛蜘蛛して蜘蛛蜘蛛しまくって
ゾンビがミミミミミミミミって蜘蛛蜘蛛してミミミミミミして蜘蛛蜘蛛る話です。

今作中の嫌な死に方の中で陰陽編の俊夫さんと並んで辛い美樹本さんの惨状が目も当てられません。
アレはダメだよ、アレは。
(生きたまま蜘蛛の糸に包まれて卵を産み付けられるなんてさぁ)

普段は冴えない香山さんがかっこいい数少ないエピソードでした。
「ぴょんぴょん」とかシュールで結構好きです。


【ぼくの青春篇・ぼくの恋愛編】
おまけ的なミニパート。軽いジョークです。
「青春篇」で名前をキラキラにしてしまったことを後悔したのはここだけの話。


【わらび唄編】
全てにおいて完全なギャグ。
我孫子武丸を誉めないと行けないシーンとか、カマイタっちとか。
そんで今作のギャグシーンの総決算盆踊りシーンは笑わせてもらいました。
普通に蜘蛛とかミネルヴァ私兵とか踊ってるのがなんとも面白い。
そんで「ばーちゃんの腰つき」は「我慢できない!」に匹敵する名シーンかと。

ただ完ENDはかなり後味が悪い。
はっとこのゲームの趣旨を思い出させてくれる。


【官能編】
楽しみにとっておいた官能編だったけど……。

あかん。これお子様はアカン奴や。

本気で途中までエロゲになったんだと思うくらい、途中までアレだわ。

みどりさんの腰つきはダメでしょ、アレは。


ただ、本当にギャグパートだったのできちんとエロ以外も充実しててよかったです。
霊能ハンター・お夏に始まって、「続・恐ろしい結末END」はあまりにもひどすぎる。

小林さん、香山さんのビキニまでは想定内だった。
美樹本さんは、ある程度なんかわかる感じだったしまだ大丈夫だった。

その後の伊勢海老は反則だよ、一体何キャラなんだよ。
楽しかったのでこのパートは問題ありまくりだけど、まあいいかな。


実はこの間に「妄想編」やったんだけど、あまりにもアレなので
最後に回したいと思います。


【洞窟探検編】
正直面倒くさかった。意外とパズル系謎解き苦手なんだよね。
クレタの牛、アリアドネの糸等一気にギリシアに雰囲気を持って行かれたから
それまでの和風ホラーテイストが薄れちゃったんだろうな。

そこもシナリオの計算通りなんだけど、
ただのミニゲーム集だなとしか思わなかった。


【惨殺篇】
グロい前に、いろいろとせつない。
流石にナントカツリーはやりすぎだと思うけど。

とりあえず人が死んで死んで死にまくる話だとしか言いようがない。

ただ、淡々とし過ぎてて恐怖は一切感じなかった。
ここに来るまで陰陽編だの底蟲村編だのガッツリグロをお腹いっぱい堪能してしまったからなんでしょうね。

あと、どんどん各章について文量が減っている気がしますが、
次の妄想編がぶっ飛び過ぎて印象が薄くなってしまってるだけなんです。



【妄想編】
これまずい。

官能編もまずいけど、これもお子様はあかん奴や。

まず、このシーンから始まるのがいろいろおかしい。
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どうしちゃったのというレベルの電波文。

実は、このパートは電波による電波の話しかない「かまいたちの夜2」の問題児シナリオです。

・それまでのBGMが不協和音に。

・すべてが「透」の妄想により、文脈のつじつまが一切合わない。

・色彩や文章の並びすらごちゃごちゃになっていき、物語の意味を考えるとこちらまでおかしくなる。


特に最後まで何というストーリーはないんだけど、だからこそ恐ろしいところがある。
赤の扉をくぐると真っ赤になって、青の扉をくぐると真っ青になって……。

それで最後に金色の扉をくぐるとコガネムシがもぞもぞしていて、
そして実はコガネムシは、透の頭の中に住んでいて、そしてコガネムシが実は……。

全ての話もつながるし、オチも最高でした。


この話はサウンドノベルだからこそ成立するというところが、非常に面白かった。
電波の度合いは割ときつめなので、受け付ける人と受け付けない人がいるのは仕方がない。



【総評(ネタバレあり)】
一つだけ言いたいのは

万人受けしない作品だからと言って駄作とは限らない。


確かに「グロ・虫・電波・生理的嫌悪からくる恐怖」は辛いものがある。
「ミステリ」を期待した人は確かにがっかりしたと思う。
でも、だからと言って「裏切り」だの「駄作」だのとは思えない。

これはこれでいいんじゃないかと思うのです。

とりあえず、そっち方面ではやりきった感があるなら、評価してもいいと思うんです。
最初から不条理を目指して、不条理を貫いたこの作品は悪くないと思うんですよ。


最後に、妄想編で好きなシーンを二つ挙げておきます。
この雰囲気が好きだったら、たぶん全部好きです。

生理的にダメだったら、たぶん全部だめです。

これはそんな作品でした。


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たぶんこのゲームで一番好きなシーン。
不条理を通り越してもう芸術的かと。

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ジェニー、お前、いつからそんなことを……。